自転車の話

小学生の頃、26インチの大人用の自転車は足がペダルに届かず、腰掛け用のサドルを脇に挟んで車体の横から足を入れてペダルを踏んでいたこともあった。中高年の方ならば何となく大体ご理解いただくと思うが、自転車はどこの家でも貴重な移動手段の足だった。小学生の頃、地方へ出稼ぎに行っていた60代頃の祖父が、欲しかった子ども自転車を買って送ってくれたことは今でも記憶の隅に残っている。


車もなかった当時は、村で唯一単車を通勤に使っている人くらいで、大体、自転車はどこの家にも手軽な移動手段として所有していた。中学時代になると自転車通学となり、真新しい自転車が田舎道に列をつくった。よく覚えているのは、日曜日に片道24キロの市街地へ自転車で参考書を買いに行っていたことである。わが町には本屋もなく参考書一つ買うのも大変であった。途中、長い上り坂の山道があり、どうしても自転車を降りなければならなかった。


今の人には想像できない話だが、自転車ほど小中高時代に有り難かった乗り物はない。小学生の頃は自転車通学は禁止されていたが、自宅から学校まで4キロの1時間かかる道のりだったので、時々、遅刻しそうなときは途中の親戚の家まで自転車で行って、こっそりズルをやったこともある。当時は道路も砂利道だったので運転もかなり上手くなった。最近は、自転車ブームだそうである。会社でサークルでもできないかと楽しみにしている。