妬みは成長を阻む

新聞に亡くなった作家の丸谷才一さんのコメントを評する記事があった。私も丸谷さんの言葉に同感であるが、日本の政治家や評論家は体裁ばかりの口調が多く、自ら議論したり実行もできないのに批判ばかりする傾向がある。日本の閉鎖社会を映したようなものだが、異能の経営者であれば、著名人たる人は声を大にして賞賛すべきである。


今回も、世界初のIPS細胞の人体への移植手術と報じられたかと思うと一挙にスキャンダル騒ぎである。単なる医学会の学閥争いとも、冷静に考えれば観ることもできようが、日本人の醜さを世間に露呈したようなものである。山中教授のノーベル賞受賞に、同学会内で嫉妬心を抱いている一部に人たちが見え隠れしているようにも見える。誠に持って恥ずかしい話題である。


ソフトバンク孫社長に対する、これまでの世間の目も賞賛するどころか、寧ろ冷ややかな批評ばかりが目立った。日本は異能の人材を素直に賞賛し、排除しようとする閉鎖的な面が一部に見られる。これは成長を著しく阻む要因ではないかと考える。「神の手」と一時期報じられていた福島孝徳医師も、医療ミスで陰を潜めるざるを得ないのが日本の現実である。


人の失敗をあざ笑い、成功を妬む人が周囲から尊敬されて成功する人物になるとはどうしても思えない。国家にも企業社会にも、このような類の人材が上層部に存在していると成長は阻まれてしまうだろう。勇気ある経営者には寧ろ賞賛して支援すべきではないだろうか。日本人の閉鎖的な性質は、グローバル時代に向かって変わっていかなければならないと思う。