大山鳴動して鼠一匹

かれこれ25年間くらい会社経営を続けてきたが、経営者として自信を表明する人ほど結果を残したケースは少ない。つまり、根拠の無い経営の希望的観測は、大体にして期待はずれに終わることが多いと知るべきである。私自身の経験としても、上場するので一口と頼まれて、断れずに出資して大事な資金が不意になったことも何度かある。


反省しても投資は自己責任なので、資金は事業資金となって使われて消えるので戻ることは無い。せいぜい、事業がうまく行ったときには配当が出て見返りがあるのだが、そんなにうまく事業が成功することは稀(まれ)だと思ったほうがよい。投資は自分の目でよく調べて、確信を持ってからすべきである。そうすれば、自分の判断が甘かったから結果にも諦めが付くだろう。


人生において最も注意すべきことは、人から金銭に関わるような旨い話には絶対乗らないことである。親子兄弟であっても同様である。人の能力に依存して不労所得を簡単に得られるほど、世の中は決して甘くはないということである。世の中の多くの失敗者は、他人の弁に乗って、欲望が頭を巡り多額をつぎ込んだ人たちである。


「大山鳴動してねずみ一匹」という有名な諺があるが、これから将来のある人たちは、他人の声の大きさに惑わされないように、自分の目でしっかり見て判断して行動することが大事であると思う。信じるに値する人は、常に謙虚であり、用心深い人ではないかと考える。「石橋を叩(たた)いて渡る」くらいの人が周りには必要だということである。