(続編)

老健施設は老人の共同寮のようなもので、基本的に健常者の入居が主体です。個室といっても隣室の人と顔を合わす機会も多いわけです。たまたま相性が悪かったのか母は隣室の入居者と仲が悪くなり、時間が経つにつれお隣のご老人と喧嘩を始めるようになりました。つかみ合いの喧嘩までして救急車騒ぎにもなったほどです。次第に周りの入居者からも白い目で見られるようになって、次第に精神的ストレスが激しくなってしまい、夜中に大声まで出したり、廊下をうろうろするようになりました。やること為すことすべて施設側から否定されてしまいました。というわけで、次のグループホームを紹介されて移ったわけです。

 当時、要支援2まで進んでいましたが、介護1でないとグループホームは入居が難しかったのですが、何とか入居させてもらいました。老健施設では邪魔者扱いにされていた母も、グループホーム入居当初は一番元気だといわれて職員からも手がかからない高齢者だとほめられていました。漸く長年のクレーム電話からも解放されて、毎日自宅に電話をしてきていた母からの直接の苦痛な声を聞かずに生活ができるようになりホッとしました。しかし、やはり無難に月日を過ごすことも段々に少なくなってきて、困ったことに食事が美味しくないとか気に入らない職員に文句ばかり言って手を煩わすようになったのです。

 わたしも訪ねる回数が月1、2回から2ヶ月おきになりましたが、日誌を読ませてもらうと職員の皆さんに大変な苦労をおかけしているのがよくわかりました。入居者のご家族は毎日か最低でも週1回は家族が見舞いに来ていましたが、遠方の私だけがたまにしか訪ねていなかったので、だんだん老化していく母も精神的に寂しかったのでしょう。そのうちに食欲もなくなり、初めの頃に比べて元気がなくなっていった気がします。グループホームではさまざまな慰労会も催されて、本当に優しくしていただき可愛がられていましたので素晴らしい施設に入居できたと安心していましたが、入居1年を目前にして体調が急に衰えはじめて施設側から入院させたいということになりました。実は肺がんも3年前に患っていましたので、時々息苦しくなっていたのも病の原因のひとつかと思います。

 老人を介護することは大変です。行政と民生委員と施設と家族がチームワークで協力して行わなければ、納得のいく老人介護は決してスムーズには行きません。私自身、ゼロからの勉強の連続で遠隔介護を経験しました。もしお困りの方や悩んでいる方の相談に多少はのれるのではないかと考えて今回お話したつもりです。お年寄りにとって理想の姿は在宅介護ですが、なかなか現代社会では苦労がつき物だと思われます。施設をうまく利用することで、介護者のご家族の負担もかなり軽減されるのは事実です。もう少し詳しい話をお聞きしたい方がいらっしゃれば、また何時でも書きたいと思います。ではこの辺で。