明日は我が身

日本の最優良企業の1社であるパナソニックが、2期連続で7千億円台の最終損益が赤字になる見通しだというニュースが昨日報じられた。まさに明日は我が身だという思いを抱いた大企業も多いだろう。まだ巨大な内部留保のある大企業だから一斉に金融機関も救いの手を差し伸べようとするが、財務内容が芳しくない企業であれば、2期連続の赤字は命取りになりかねない。当該のパナソニック(旧社名・松下電器)は押しも押されぬ優良企業として日本の家電業界に君臨してきた大企業である。


3、4年前には液晶テレビが爆発的に売れて過去最高の業績を上げたが、急激な市況の悪化でそれが裏目に出てしまったところがある。まさに山高ければ谷深しという、需要の大きな浮き沈みに巨大企業が対応できなかったことが原因と言えよう。しかし、私は家電業界悪化の原因の一つには政府によるデジタル化へのハードランディングがあると思う。ソフトランディングにアナログとデジタルの併用を国民に丁寧に呼びかけていれば過度な需要にならなくて生産も平準化されたであろう。


今更嘆いても仕方が無いが、官僚主導で市場のメカニズムを無視した政策を採れば、経済が混乱してしまうこともあると再認識する必要があると思う。事業の選択と集中の必要性は以前から言われてきたことであるが、短期間の需要を一時的に作り出すとその後に反動が出てくるのは当然である。ましてや急激な価格破壊が起きれば大量生産しているからこそ赤字の垂れ流しが止まらないのである。日本経済にとっても大きなマイナスであり、生活の糧である大切な雇用まで影響しているので、正直な気持として残念でならない。


1950年以来63年ぶりに無配との事であるが、創業者である天国の松下幸之助翁はこの状況をどう見ているだろうか。本当に申し訳ないと歴代の経営陣は心に思い描いていることと思う。是非とも、また明るいパナソニックとして復活して世の中を少しでも元気にして欲しいと期待している。たとえ優良企業でもグローバル市場においては、いつ如何なる災難が押し寄せてくるかわからない、「明日は我が身」だと我々も強く認識しなければならないだろう。