がんの話

わが国のがんによる死亡数は年間36万人に及び、死因の第1位らしい。がん発病後の5年間生存率なども各都道府県の県立がんセンターなどで統計として出されているが、一般にはあまり深刻な問題として捉えられていない気もする。周囲にがん患者が存在すると我がことのように心配することもあるが、人ががんで死亡する確率が一番だとしても、身近な問題とならない限り人は拘らないようである。


私の父も、今もし健在であれば90歳となるが、26年前に骨髄性白血病でこの世を去った。母親は、3年前に86歳であったが、最後は肺がんを患って生涯を終えた。80歳過ぎてからの頃に医者から手術を勧められたが、高齢で体力も無いので万が一のことを考えてお断りした。自分の身近でも大体亡くなると死因はがんというのが普通である。だから自分自身としては毎年人間ドックも受けて気をつけているつもりである。


私自身は、20代の頃から入院生活というのは何度も経験してきたので、何を指摘されても普通の人ほど臆病になることはないが、人生初めての入院ががんで帰らぬ人になった知人もいる。外科や内科で一度くらい入院するのは多くの人が経験しているのでそれほど深刻にはならないだろうが、がんで入院となると人生の死期を真剣に考えてしまうのである。わたしも、たまたま誤診であったため笑い話で終わったが、がんの専門病院へ送られたことがある。


私自身の経験談であるが、がんの専門病院に入院して初めて、「シャバ」の生活が如何に幸せであるかを実感するのである。専門病院へ行くと毎日受診に訪れる患者の多さに胸が詰まる思いをする。多くの方ががんと診断されて究極の地に医者を頼ってくるからである。毎日千人の方ががんでこの世を去っている計算になる。がんが完治できる高度医療が開発されればノーベル賞ものだろう。山中先生には是非、頑張ってもらいたい。