栄枯盛衰

先日ある新聞で、かつて流通業界の覇者だった人物のご長男が過ぎし日を語っている記事を見かけた。ビジネスは懐かしさに耽っていても、決して状況が好転するとはならないが、最初に日本にスーパーマーケットを呼び込んだ第一人者の足取りを第三者の目で少し偲んでみたい。


なぜあの大企業が潰れてしまったのか今もって残念である。私が高校を出て上京し最初の住処となったところは、東京都北区の赤羽という街から更に荒川沿いに歩いた場所であった。田舎者の私にとって東京は銀座のようにビルだらけだと思っていたが、こんな閑静なところも東京だとは意外だった。


ちょうど上京して大学進学を目指していた私にとって、当時のスーパーダイエーほど気持を癒してくれた楽しみ場はあまり無かったようにも思う。当時、住み込みで働いていた新聞販売所での様々な人間コミュニケーションも楽しかったが、配達途中でめぐり合うお客様とのやり取りも人心に触れて良かったと思っている。


受験勉強真っ只中なのに、長い田舎暮らしが抜けずのんびりとしていたために、受験競争の厳しさに負けて何度も試験に失敗してばかりであった。しかし、今日があるのも様々な挫折を経験したからこそだと考えている。ダイエーも神様のような存在だった中内功さんが、家業としなければ今も栄え続けていたであろうと思う。


企業はいい時ばかりではない、経済には浮き沈みがあるので「勝って緒を締める」慎重さが大事である。いくら商才があっても聴く耳を持たなければ事業の継続は難しい。数年前までに飛ぶ鳥を落とす勢いがあっても、近年のグローバル経済の変化を見誤れば、奈落の底へ落ちるとも限らない時代が到来しているのである。