山高ければ谷深し

経済も企業の経営もこれまで「山高ければ谷深し」という経験を何度もしてきた。しかし、苦い経験をしても繰り返すことが多い。3年前には史上最高の利益を出していた日本の家電業界が、一気に韓国勢などに主導権を握られて赤字に転じてしまった。理由は様々であろうが、先日、私の知人が尤もらしいことを話していたので此処に紹介したい。


日本の政策の失敗ではないかということである。家電業界は長らく国内消費に支えられて、毎年一定の需要に対応してきた。冷蔵庫しかり洗濯機しかり、そしてテレビも国内市場により平均的な需要に守られてきた。当然、機能的には日本の家電は最先端なので、日本人は新しい機種を好んで購入して家電業界を支えてきた。


ところが、アナログ放送打ち切りと政府が一斉に音頭を取り、地デジ移行を強力に進めてしまったので、エコ家電とともに一挙に消費が集中し、テレビ需要の山が形成されてしまった。確かに画期的な映像に進化したことは認めるが、もっと柔軟性を持って買い替えが進むように政策を練れば、過剰な需要にならずにメーカーの動きも変わっただろう。


国内の大量生産、大量需要で世界まで需要を伸ばそうとしたために、海外勢との価格競争にやられてしまったのである。政策を和らげて、国内需要を平準化していれば、自分の首を絞めるような価格破壊は起きなかったかもしれないと思われる。国内需要が山のように高くなれば、谷となってその反動が来るのは当然である。


知人は、未だにアナログのテレビで充分事足りているという。政府があまりにも国民に需要を迫ったがために、メーカーも一時は大儲けをしたが長続きせず、設備過多で家電業界の足腰まで弱めてしまったようである。日本のお家芸で今日まで来た家電業界であったが、リストラで雇用まで守れなくなってきている。


残念ながら、日本政府の戦略の失敗と言えないだろうか、と知人と先週は議論しながら考えたしだいである。