尊属殺人事件に思う

昭和の時代を生きてきた多くの人たちの感覚から推測すると、死刑に相当するほどの量刑を科せられると考えられてきた尊属殺人(血縁関係の中での殺人)が、現在の日本で頻発していることに何故だと想像を絶する気持ちの人は多かろうと思う。どうしたら、かつてのような事件の少ない時代がつくれるのか、機会があれば議論を尽くしたいものである。


地方に住んでいた私たちは、日常に「殺人」という言葉さえ聞いたことも無かったし、帝銀事件や吉展ちゃん誘拐事件など報道されると、驚嘆のあまり「都会は物騒だな」などと考えたものである。私も高校卒業まで田舎で暮らしたが、殺人事件というものが1件だけあったことを、当時とてもショッキングな出来事だったので未だにはっきりと覚えている。


近年のように、殺人事件がこれだけ頻繁に毎日ニュースに流れるようだと、尊属殺人だけが量刑が重いのも不公平のような気がしないでもない。人間として、親や子どもを殺害するのは言語道断で倫理的にも許されないので量刑がもともと重いのであるが、現代社会では事件の加害者に倫理観など当てはまらないほど、許されない事件のケースが多いようである。


でも、根本的には家庭環境がしっかりして、地域社会とともに子どもを育てていく時代を、日本人が再びつくり上げていくしかないような気がする。かつて日本にも、日本船舶振興会の元会長で笹川良一という大人物が存在したが、年老いた母親を背負っている親孝行の姿に昔の日本の良さがあったような気もする。