昨今の経済的所感

相変わらず為替が対ドルで76円台の円高を続けている。対ユーロ101円でピーク時の3割円高ということになる。つまりユーロ圏で商売すら難しいのにヨーロッパへ輸出など採算が取れるはずもない。ましてやギリシア救済で大変な状況でもある。米国もいまだリーマンショック後のバブル崩壊による爪痕は癒えていないようで、依然高い失業率を抱えてオバマ政権も再選すら危ういような兆しである。

ところがIT業界は空前の好景気のようで、アップルやグーグル、マイクロソフトをはじめIBMなども絶好調のようである。スマートフォンなどの売れ行きがSNSブームと重なってIT業界としては上り調子であるが、日本と同じように製造業や流通業を中心とした大規模な雇用を必要とする産業が新興国に偏ってきているために、国内製造業は空洞化して今後も円高のために雇用の受け皿が減少する傾向にある。

IT業界は技術の変化のスピードも速く、たやすく雇用を増やせる産業ではない。問題はこれからの日本経済をどうするのか、今後の国家戦略を国がなかなか描けないでいることである。不思議なことは米国経済は悪いといっても、リーマンショック後は日経平均よりNYダウの方が随分と回復しているからである。本来であれば株価が1万円でもおかしくないのであるが、それだけ日本の市場に投資するだけの魅力が無いということだろう。

自民党政権から民主党へ政権が移ったが、投資を呼び込み株価を上げるような効果のある景気浮揚策が政府としてまったく実施されていないのである。つまり、これまでは経済的に期待感の持てる政権ではなかったということであろう。目下、心配なのは円高がこのまま継続すると雇用の場は海外へ移っていくということである。国会議員には補正予算の審議は早急に進めて、もっと新たな雇用を生む産業の育成を議論してほしいと思う。