千載一遇のチャンスは人脈から

長らくIT業界で事業に携わってきて一番良かったことは何かと問われれば、私は否応なく多くの人脈ができたことだと言えるだろう。もし昔の業界で今日まで働いてきたとしても、その狭い業界内の人脈で終わっていたかもしれない。昔の業界にいたときも、とにかく社内の人脈以上に社外の人脈を作ることに専念してきたこともあるが、やはり業界の世の中は狭かったようである。

 しかし、人脈は保守をしなければ知らないうちに消え失せてしまうこともあるし、次から次に無尽蔵に増えていくものでもある。古い人脈を大切にすることも必要な面はあるが、事業を進めていく上では新しい人脈を発掘していかなければ変化の激しい時代の中でビジネスはいつまでも続かないと思う。

 わたしはいつも初対面の人と会うのを楽しみにしている。多くの人と知り合いができれば、その何倍もの人脈がまた自然に増えていくのである。この歳になると顔は見覚えがあっても名前はなかなか出てこないことが多い。面白いのは、こちらが顔を覚えていても相手の方が覚えていないことに満足感を覚えることも時々あり滑稽さに浸ることができる。度々出かけなければこのような経験も味わえないだろう。

 誰かが「IT業界はアイデアと人脈である」と話していたが、まさに着想と人脈がなければ見えない仕事を探すのは至難である。しかし、わたしはその上に運がつかないとビジネスの成就は難しいと思っている。運は人脈をうまく自分自身でコントロールすることによって向いてくるので、人脈がなければ運などついてくるわけもないのである。

 IT業界はドッグイヤー以上に進化が速いと言われているので、旧来の人脈ばかり追いかけても新しいものは生まれてこないのだが、これまでの延長戦でのビジネスが益々減っていくことは至極当然なので、新たな時間の使い方をしなければ新しい人脈も生まれないし、新たなビジネスとしてのシーズも発想も沸いてこないだろうと思うのである。